<2024年夏、時代が物語る鮎のルアーフィッシング> 鮎という魚は色味も鮮やかで美味しく、釣りと無縁な方達にも認知されているポピュラーな魚。川魚の代表とも言える鮎だが、河口付近で生まれた稚魚は海へ下り、潮に揉まれ海でプランクトンを食しながら稚鮎を卒業。そして再び川を遡上して一生を過ごす年魚だ。そしてその川で鮎を待ち構えているのが我々人間。川に再び戻った鮎は石についている苔を食む(啄む)。急流の水中でキラキラしている光景を見たことはないだろうか?あれは苔を啄む鮎が魚体を捩らせ太陽光で反射しているのだ。その食生意欲が強いからか?自分のお気に入りの石(苔がついた)を見つけると、テリトリーとして独占欲を持つようになる。そんなファイティングスタイルを利用したのが、日本古来の伝統的釣りスタイル「鮎の友釣り」だ。
事前に人間が用意したライバルの鮎(囮の鮎)に針付きの糸を連結。テリトリーに対してライバルの鮎を人間が誘導して送り込む。すると警戒した鮎がライバルに猛烈威嚇。アタックを重ねるうちに、連結された針に刺さってしまい「友釣り」が成立するのだ。もはや「友」という言葉は語弊がるかもしれない(笑)。「釣り」と言えば、餌を針先に付けて魚の食性に訴えるのが基本だが「鮎の友釣り」は、そもそもの考え方が違うのだ。因みに「ルアーフィッシング」と言えば、食性で誘うこともあれば魚に興味を持たせて口を使わせる手法もある。と考えると、この時点で「鮎の友釣り」とは至って「ルアーフィッシング」に近い。だったら「ルアーでライバル鮎を演出してみようじゃないか!」というのが、近年生まれた新しい釣りスタイルなのである。
「ルアーの泳がせ釣り」が基本になるため、より遠くに飛ばしたりピンポイントを目掛けたり、通常の「ルアーフィッシング」のようにキャスティング重視ではない。あくまでも自分のチョイスしたルアーを目的地に送り込むことが優先だ。その日の天候や流れやエリアによって、反応しやすいルアーカラーや無数の釣り針パターンがある。今回お話を聞かせていただいたのは、この手の第一人者に相応しいルアーフィッシングメーカー“パームス”代表の飯田さん。彼がプロデュースした鮎ルアーは既に各種展開中だが、そのルアーに付ける針の付いた仕掛けは、各針メーカーがリリースする「鮎の友釣り専用の針」を装着して楽しむことができる。このように近年盛り上がっている「Are You Lure?」について(ダジャレw?鮎ルアー)、飯田さんと埼玉県入間川の地元漁協で活躍中のローバイトが慕う“竜也さん”にお話を聞いてみた。
飯田:相模川が2018年に鮎のルアー釣りを公認したタイミングで、自社でも鮎ルアーのプロダクトを始めました。徐々に注目されてきましたが、いよいよ「今年こそ開幕!」のような雰囲気ですね。本来は鮎ルアー禁止の川が多かったのですが、今年になってから公認する川が一気に増えた気がします。そもそも川によっては放流しなくても、今年の相模川なんて1000万匹が遡上しているらしく、仮に鮎釣りを理解してなくても誰でも簡単に釣れますよ(笑)。実は近隣のドブ川みたいなところでも見掛けられますからね。こんな豊富な魚種は資源としても珍しいですよ。
竜也:でも鮎釣り市場って、なかなか複雑で過渡期に来ていると思います。鮎の友釣り愛好家って年配者が多くて、若い人やビギナーが近づきがたい敷居があるんですよ。釣具も高額だし自己主張が強すぎて、次世代がついてきてないのが現状だと思います。その流れで川の横で囮(おとり)の鮎を売っていた囮屋も経営が厳しくなって…。でも友釣りの人達は囮になる鮎がいないと友釣りができないんで、そんな時は疑似的なシリコン性などの鮎型ルアー(REAYUなど)を使って1匹目の鮎を囮として確保してから、始めて友釣りをスタートするっていう流れなんですよ。僕は地元の漁協組合に加入してますけど、漁協の資金源って入漁料もあるんですが。囮鮎の売上も相当大きかったんで各地の鮎に纏わる漁協は頭を抱えていると思いますよ。でもそんな時に登場したのが、飯田さんが考案した鮎ルアーなんですよ。鮎ルアーの公認することによって、入漁料が伸びてやっと兆しが見えてきたような状況ですよ。時代が生んだ機種改正の大チャンスだと思いますよ。
飯田:そう思っていただけるとありがたいけど、色んな漁協の考え方があるんでね (笑)。でも鮎ルアーの普及で裾野が広がって、鮎釣りの原理や面白さや美味しさを知ってもらうのは良いことだと思うし、友釣りをやってみたい人も出てくると思うんですよね。鮎釣りは流れや地形を把握することが重要になってくるんで、自分のホームリバーを作ってみるのも手ですよね。毎年入漁券を買うより漁協に加入してしまった方が年間費も安い場合があるしオススメですよ。鮎の遡上は年によって全く予想できないので、定期的に鮎を放流して楽しめる釣り場は今後も必要だと思います。通いつめた川の「あの岩のこっち側のこの深さで誘いたい!」っていう、ピンポイントな考え方も楽しめると思います。そもそも囮鮎だと…意志があって生きている魚なんで、ピンポイントの誘導には相当の技術が必要ですしね。でもルアーだったらリップをカットしたり角度の調整をして、自分が目指すコースにルアーを送り込めるんですよ。それを前提に僕の作った「ESCADE」は、カットや調整ができるように元からリップも大きめに作ってます。新作の「ESCADE Vib F」はフローティングで岩の上を這わすように使うルアーだし、これからもっともっとミクロ規模で色んなルアーや釣り方が出てくると思います。
竜也:山女(ヤマメ)なんか、日によってフラフラしている魚なんですけど、鮎には絶対に住所があるんですよ。
飯田:お?、面白いこと言うね(笑)。
竜也:人間が見ても根拠は分からないんですけど、謎に溜まるマンションみたいなところがあって、それを見つけたら釣果に大きく差が出ますよ。そしてこれまた謎に、人間がそこに近づいても逃げないんですよ(笑)。寿命が短いから生き急いでいるのか?ずっとハミ(啄み)続けているんですよね。独りで餌場を陣取っているタイプもいれば、グループ活動みたいに群れたタイプもいるし。流れの緩い浅瀬でほんわかしてる奴もいれば、急流と戦いながら勇ましい奴もいるんですよ。でもそんな気合いが入った奴がルアーにアタックしてきたら、平気でルアーが2mくらい吹き飛ばしちゃうんですから(笑)。わりと謎だらけなんですよ。
飯田:時期やタイプによって違うとは思いますが、本当に不思議で分からないことだらけですよ(笑)。鮎釣りは昔からあった釣りですが、このタイミングで改めて発展途上な、これからの釣りだと思うんですよね。
竜也:僕もバスフィッシングやトラウトフィッシングを経験してきたけど、実は日本が正面から誇るゲームフィッシングって、ヘラブナとワカサギと、この鮎釣りだと思うんですよね(笑)。奥は深くて追求したら永久的に面白いはずです。
*釣りのHOW TOは専門誌やYOU TUBEで存分に勉強していただき、ローバイトが改めて伝えたいのは「魚の口に針を掛けるだけでなく、釣りの周辺や背景まで楽しんでしまおう!」ということ。我々が魚釣りを楽しむにあたって、自然環境や経済の仕組みは切っても切り離せない問題。個々の「フィッシャーマンシップ(釣り人意識)向上」が、我々釣り人の未来を握っていると考えています。センス良く遊ぼう!
<鮎ルアーの第一人者が提案する2024年の「ESCADE」シリーズ>
PALMS/ SHALLOW TUNE ESCADE JOINTED
鮎ルアーのデビュー作を飾ったESCADEだが既に第三弾。今度は三連式のジョイントタイプなため、緩流地帯でもスムーズに泳いで鮎を誘ってくれる。90mmの10gで8色展開。
PALMS/SHALLOW TUNE ESCADE vib F
バイブレーションタイプに足首程度の浅瀬を攻めるフローティングモデルが登場。岩の上部の苔を食む鮎には待望のベストマッチ。100mm/9.5gと140mm/19gサイズを8色展開。
フィールドチェック:
川を見渡せるところがあったら、地形を頭に入れたり魚の姿を探してみよう。鮎を見つけることができたら、水中の行動を観察するのに絶好の機会。眼鏡や帽子を落とさないように!
Rootwatのゲーター:
水中を歩く専門の装備は必要。こちらは足元を守りながら砂利の侵入を防ぐrootwatのWET WADING OUTER GUIDE SOCKS(税抜7,700)。www.rootwatsocks.jp
若い世代との触れ合い:
普段はバス釣りが好きな高校生が、鮎のルアー釣りに興味を持ち話しかけてきた。「やりたいことを探している」という若き国の財産。竜也を見て漁協のお仕事に興味深々だった。
http://www.palms.co.jp https://www.rootwatsocks.jp https://www.facebook.com/ryuya.saito/?locale=ja_JP