THE ANNIV「HMKL 50th ANNIVERSARY」
2024年、様々な驚きのニュースが飛び交う中、フィッシング界にもビッグニュースが到来。2つのブランドが華々しい周年記念を迎えた。言わずと、釣り業界に名を残すレジェンドなお二方。今日までの道のりを振り返っていただき、必然や偶然、数々の試練と喜びなど、この機会に驚きの秘話を語っていただいた。まずは泉和摩さん(70)。50周年を迎えたHMKLの代表であり、ご自身が手掛けたリアル系ハンドメイドミノーは、10年待っても手に入らない代物と言われる超カリスマルアービルダー。大手メーカー「DAIWA」のプロスタッフとして長く関わる一面、ジャッカル社の立ち上げに自社の「K-1ミノー」をインジェクションで委ね大ヒットを記録。元々トーナメンターとして活躍する真の勝負師だが、時にフィッシングスクールの講師の姿もある。そんな国内バスフィッシング界に大きな影響を与える偉大なレジェンドに、ご自身の釣り人生を振り返っていただいた。インタビュアは約22前、泉さんの授業を生徒として受講していた仲川さん。現在ローバイト配布店でもある「ヨムキクノム」の店長である彼にインタビューをお願いした。優しく答える泉さんだったが、国内最高峰のJB TOP 50を今年は辞退してJB桧原湖に参戦予定。もちろん、優勝を狙い成績を残してTOP 50に復帰する意気込みを隠せない様子だった。
泉:通っていた小学校の隣が釣具屋だったんで、ルアーの存在は気になっていましたね。中2くらいで初めてルアーを作りました。父親が弓かけ職人だったんで、専門的な工具が家にありましたから。最初の1個は見様見真似で直ぐに作れましたが、動きが足りなくて釣れませんでした。ある日、何を投げても釣れない時に、拾ったラパラのミノーを投げたんです。そしたらボコボコ釣れてしまって。次のルアーはラパラを意識して、身の回りにあったタバコについている銀紙をルアーに貼り付けてベイトフィッシュに似せてみたんです。
仲:チューインガムにもついている銀紙ですよね?
泉:それをダートするルアーにしたら良く釣れましたねw。
仲:2個目にして今の原型が出来てしまったと…?凄い、才能ですね。泉さんと言えば、アルミホイルを貼り付ける技術も有名ですもんね。
泉:「携帯電話を作れ!」って、言われたら無理ですけどw。釣れた実績があっても、それは釣れただけで、そもそもバスがどんな動きに反応するかを分かって無かったんだから。作るのは簡単でしたけど…思い通りの動きを出す事と、どんな動きに魚が反応するか見つけるのは別ですからね。どんな次の一手があるか分からないし、未だにアメリカのルアーを見ていると年に1個くらいは驚くのが出てくるんですよね。バスという魚を完全に解析すれば話は別ですけど、おそらく現時点では50%もまだ解明されていないでしょうね。
仲:バスは世代交代して賢くなっているような気もしますが?
泉:古いルアーは不思議と釣れなくなって行きますよね。だから永遠に釣れ続けているルアーは凄いですよ。例えばへドンのザラスプークなんて、あんなシンプルな形状で未だに釣れるでしょ?あんな到達したルアーはなかなかないですよ。あれがペンシルのNO,1だと思っているから、私はペンシルベイトを作らないようにしているんです。
仲:泉さんは日本で初のJBTAアングラーズオブザイヤーを獲得して、その後は渡米され現地で活動されていたじゃないですか?国内とアメリカはどうでした?
泉:何もかも刺激的で…。国内でNO,1になっても、上には上がいる事実を目の当たりにして、もう何も言えない気持ちでしたね。
仲:アプローチの違いですかね?
泉:最初のラパラの話と一緒で、造形美がどうとかじゃなくて、彼らからすると「如何に釣れる要素が入っているか?」なんです。リアルな魚の演出で誘うよりも、もっと違う魅力でバスを集めるイメージですかね。向こうはビザの関係でルアーを作っても販売は出来ませんでしたが、ルアーを作ったら仲間には渡していました。レッドマンという団体でバーニー・シュルツという友達が私の作ったスピナベで最終戦に優勝してA.O.Y.を獲得したらしく、モーテルに帰宅したら欲しがる人の行列が出来ていて驚いた記憶があります。アメリカ人は釣れる物に素直ですよ。
仲:海外経験もそうだと思うのですが、泉さんにとって大きなターニングポイントってありますか?
泉:1998年だったかな?加藤氏と小野氏がジャッカルを立ち上げると言うんで、ウチの「K-1ミノー」をインジェクションでお願いした事かな…。彼ら最初のハードベイトだったらしく良く売れましたし、おかげさまで今でも売れていますよ。それくらいからですかね?ビルダーとしてではなく、メーカーとしてルアーを作れるようになったのは。彼らとは何かと縁があります。
仲:インジェクション化について不安や葛藤はなかったですか?
泉:いやいや、そもそもバルサだと完全なサスペンドミノーは作れないんで、インジェクションこそ実現出来て良かったですよ。
仲:泉さんの作ったハンドメイドルアーを待つ人が絶えなく、十数年は待っていると聞いた事があります。トーナメントの試合に出て勝たなくても、それだけでも生計は立てられるように思えてしまうのですが?
泉:逆ですよ!試合に出るためにお金を稼いでいるんですよ。考えてみてください!ルアーメーカーってすごいですよ?自分で考えて作ったルアーで釣れたら勝っちゃうじゃないですか?私は過去に世に出していない自作のルアーで2回勝ってますからねぇ。もちろん、そんな釣れるルアーは量産しないし売らないですよ。みんなに真似されたら、釣れなくなっちゃいますから…。一生に数回しかないですけど、そこが一番面白いかも知れませんね。
仲:もはやビルダーでありながら、根っからの「釣り師」であり「勝負師」ですね?!今後の活躍も期待しています。ありがとうございました。