迫間謙一さん。2023年に自分モデルのロッド「TELECAST」をリリースしたばかりの通称ハザー。映像関係の仕事に携わるため、映画や海外ドラマ鑑賞を好む現在35歳のハザー。ゆくゆくは自分プロデュースのモノ制作(フィッシングアイテム)を中心に釣り業界を驚かせたいようだ。普段より情報や環境豊かな時代に育ってきた彼だが、常に時代にあったアクションとアンテナを心掛けたいと彼は言う。しかしその反面、時代に流されないモノを作って表現して行きたい意志もあるそうだ。若者の後半?に差し掛かった彼の頭の中では常に色んな構想が広がっている。少し不安なところがあるからか、持ち前のイジられキャラでガンクラフトクルーや周囲に愛されている。そんな彼にガンクラフトの新作ビッグベイト「RATCHET 184」(Length:180cm class/Weight:2.5 oz class/Price:¥6,800&tax)を使って、ガンクラフトのホームとも言える山奥中の山奥の合川ダムでデカバスを釣るというミッションを企画。ガンクラフト代表の平岩社長とも交流の深い彼だが、遂に地元の偉大な先輩平岩社長の手掛けたルアーと、一年生レベルだが自分モデルのロッドでメイクする日が来たと気合いは充分。平岩社長が喜んでくれる姿を頭に浮かべ終日竿を振ったが、結果は意外な展開に(笑)。道中、彼の思う「RATCHET 184」やリスペクトが止まない平岩社長について聞いてみた。
ラチェットはジョイクロやシフトに比べてパワフル系なルアーですね。側面もあって体高もあって、ブルーギルまで行かない絶妙な太細いと言うか「クランキングビッグベイト」と呼んでもおかしくなさそうです。ゆっくり巻いても魚を引き出すジョイクロ。高速巻きで水を切り、細長くベイトフィッシュに近いフォルムをしたジョイクロ・シフト。そして次にリリースされたラチェットは、太短いからか?シフトよりも首を振らせるのが得意。基本はリーリングだけでアクションをつけられるし、少しラインスラックに遊びがある方が扱いやすいかもです。そしてROMダンパーというシリコン性のオリジナパーツがジョイント部分にあるため、巻き方で2連結のアクションも出来るし3連結のアクションも出来るんです。ゆっくり巻いたら優しいS字を描き、加速をつけて巻いたら水面からテールを出して水しぶきを上げ水面を攪拌させる。止めると水中でやんわり漂うフォルムにバスはたまらなくバイトしてしまうという威力を持っています。このROMダンパーは使いながら育てるイメージで、劣化してしまったら追加パーツとしても販売中です。リリースする3大ビッグベイトの中でも上手く棲み分けが出来ていて、これらはガンクラフトさんの引き出しを表す証拠でもありますよね。
平岩社長はビッグベイトの世界を変えた人。抗えないし唯一無な存在ですね。そもそも着眼点が変わっているので、物事や事柄を普通にスルーや納得しないと言うか…常に疑問と答えを求めて過ごしているように見えます。多くを語らないナチュラルな感覚で「そんな事を考えてたんや!」と日々驚かされています。時代は説明を欲しがっているので、ルアーのロジックをもっと明かした方が良いんちゃうか?と思いますが「ほら釣れたやろ!」と多くは余り語らないですね(笑)。とにかく日常でもモノを創る事が好きで、棚や水槽や塗装ブースの業者レベルまで手掛けてしまう事が多々ありますね。クリエイターとしてのバランス感もあって、敢えて100%まで完成させないで余力を残しておくと聞いた気がします。その残りとはユーザーさん自らに見つけて欲しいからだと。とにかくモノ創り意欲はリスペクトですし、そんな方にボクなんかのモノ創りを認めていただいたり、ボクみたいな者を拾っていただきこんな機会をいただけたのはホンマに嬉しい話です。
当たって砕けたハザーの残念な一日
いかにも釣り雑誌が行いそうな実釣レポートに然程拘っていないローバイト。しかし今回は敢えてレポートしたい。「釣れなかった」とは言え、印象に残るロケだった。関東人には憧れのデカバス聖地「合川ダム」とは、透き通った水質でマッディー(濁った水質)育ちの自分には衝撃が強すぎた。もっと言うと、テレビやYouTubeでしか見た事のない大自然に期待は膨らみまくった。目指すは早朝のハザーお墨付きバックウォーター。「どう見ても渓谷」なフィールドはとても新鮮で、急流の岩陰に潜むデカバスがビッグベイトを引っ手繰る姿が頭に浮かんでくる。竿先にはハザーオリジナルカラーのラチェット。そのカラーに一番マッチするハザープロデュースロッドのLEGIT DESIGN/TELECAST TC-70XH を握り、本日新調したばかりのリールDAIWA/ZILLION SV TWでキャストを開始。「これで釣るぞ!」と少し緊張したハザーの背中は物語っていた。
今日の魚影は薄くルアーにアタックする気配すらない。どうやら1週間前の大雨から魚のリズムが狂っているらしい。それに合わせるかの如く、本企画主旨のラチェットミッションを無視して竿先のルアーを早々にチェンジするハザー(神様は言う、そういうとこやぞw!)。おそらく「とりあえずの一匹」を先行したいのであろう。彼の定番とも言えるジョイクロを投げ始め、遂にはポイントを移動してジョイクローラーを投げ始めた。水押しの強いラチェットより、デリケートになってしまったバスをジョイクローラーのフィネスな波紋で誘う作戦だ。既に企画主旨とはズレているのだが、そのチャンスは夕方になってやっと訪れた。橋の上から覗くも全く魚っけのなかった水辺だが、夕方のインターセクションでは水面にボイルも現れ賑やかな様子。期待を込めてジョイクローラーをスローにリトリーブ。遂にそれを目掛けて水面を割った波紋、そして曲がる竿先。からの、木霊するハザーの情けない悲鳴…。おNEWのリールが自分プロデュースの竿に座り切っていなかったらしく(固定ミス)、魚の重みが乗った瞬間にリールシートからリールが外れてしまった(神様は言う、そういうとこやぞw!)。肩を落としたハザーは「このロケで普段お世話になっている平岩社長に恩返ししたかったのに…」と呟く。先程の鳴り響いた悲鳴とは真逆のかぼそい声だったが、再び彼の声が木霊しているように聞こえた(笑)。
そんな一連をガンクラフト社に帰着して報告するハザー。関西風なのか、ハプニングミスは面白仕立てに少し盛り気味だった。しかし、それを温かくイジりながら迎える平岩社長。「ハザーらしいんちゃう?」と、さっぱり口調ながら笑みを浮かべ彼を慰めていた。その光景を見るにハザーとは…マイルドでシャイな一面を持ち、気合いと引きで成功を射止めるわけでもなく、かと言って野心はあるものの何処か腰が引けている謎の距離感の持ち主。独特な価値観で時に人の首を傾げさせる事もあるようだが、逆にそれがイジられキャラとして実は親しまれているように見えた。だがしかし到底そんな事に気がついている余地はなく、 帰宅道中では反省と後悔で元気がないのかと思いきや、別件で持ち帰った映像仕事のダメ出しで頭が一杯だったようだ(神様は言う、そういうとこやぞw!)。次回がありますように!
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